腕時計の歴史と機械式時計の危機
腕時計の歴史は今から200年以上前の18世紀末に遡ると言われています。ただし初めはステータスシンボルや装身具としての意味合いが強く、貴族や裕福な人たちのみが所有する特別なアイテムでした。腕時計が一般の間に広がり始めたのは20世紀に入ってからのことです。もっとも当時の腕時計はゼンマイを動力とする機械式時計に限られ、複雑な構造からある程度の高級品であることに変わりはありませんでした。その状況を一変させたのが水晶の化学的性質を利用したクオーツ式腕時計の誕生でした。1969年に発売されたクオーツ式の腕時計は70年代には大幅なコストダウンに成功し、瞬く間に市場でのシェアを拡大しました。正確かつ低価格で耐久性に優れ、しかもメンテナンスの手間もかからないクオーツ式に対して伝統的な機械式時計はなすすべもなく、一時は存亡の危機に立たされるほどでした。
機械式時計の復権とその魅力
クオーツ式腕時計の興隆の前に機械式時計は壊滅的な打撃を受けることになりました。しかし一部の人の間でその伝統的な魅力は評価され続け、1980年代以降は実用品である以上に贅沢品としての人気を獲得するようになりました。つまり腕時計が一般化した時代、あるいはそれ以前からのステータスシンボルとしての役割が再認識された格好です。豊かなデザイン性やメンテナンスによる長期間の利用、そして高い資産価値など機械式時計にはクオーツ式時計にない独特の魅力があります。携帯電話やスマートフォンの普及により腕時計自体の存在意義が薄れていく中にあっても、機械式時計は多くの人が憧れを抱くアイテムであり続けることでしょう。
グランドセイコーはセイコーウォッチが展開している時計ブランドでもフラッグシップという位置づけです。組み立てはもちろん、部品までも自社で生産する、世界でも稀な「マニュファクチュール」ブランドです。